

うつ病で闘病中。でも最近はなんだか気分もいいし、早く仕事に復帰できそうだ!生活もあるし、いつまでも仕事休んでいられないよね!早速復帰の手続きをしに行こう!

ちょっと待ったぁ!!!

なんですか?白ぶどうさん

急ぐ気持ちはわかるけど、その意欲、本当に「やる気」なのかなぁ?

もちろんですよ!もう会社に復帰できるくらい元気ですから!

うつ病には落とし穴があってね。一見「やる気」が出てきたように感じていても、実は「早る気」の可能性もあるんだ。

「早る気」???

そう、書いて字の如く、焦る気持ちのことだよ。この「早る気」のまま何かを頑張ろうとしても、まず間違いなく失敗に終わってしまうよ。
「やる気」と「早る気」、言葉は似ていても、実態は全くの別物です。
うつ病罹患者にありがちなのは、ちょっと回復傾向になり、それなりに色々なことへ意欲がで始めると、同時に現状に対しての不安を急いで解消しようとしてしまいがちです。
「早く復職しなきゃ」「早く元の生活リズムに戻さなきゃ」「早く信用を取り戻さなきゃ」
こうした復活への焦りから、どうしても無茶な行動をとってしまいがちです。
- 「早る気」の意味と危険性
- 「早る気」で失敗しないための対策
「やる気」と「早る気」の違い
「早る気」とは何かに追われ、自分の意思に反して行動している、焦って物事に取り組んでいる状態。
「やる気」とは目的が明確で、実現するために希望を持って取り組む状態のこと。
「早る気」の代表例が正しく8月31日、夏休み最終日の宿題です。
覚えのある方、絶対にいますよね?
夏休み最終日に溜まっている、山積みの宿題なんて、もはや勉強ではなく、ただの事務作業です。
先生と親に怒られないために、ただやるだけ。
インターネットで答えを検索するなんて当たり前。何なら後半はもう面倒くさくなってページすら飛ばします。
しまいには友達に頭を下げて答えの丸写し
こんな状態で、勉強が身になっているわけがありませんよね?
楽しくもなければ得られるものもない。正しく「不毛!」の一言です。
一層のこと白紙のまま提出した方が潔いいかもしれません。
このように、早る気というのは「よし、やるぞ!」と思うため一見して「やる気」と錯覚しがちです。
しかしやりたいわけではないので、どうしても長続きせずに、途中で挫折してしまうんです。
結局時間と労力ばかりが失われる、得のない状態になってしまうんです。
今一度、自分の意欲が本当に「やる気」なのか、それとも焦っているだけの「早る気」なのかを考えてみましょう。
「早る気」がもたらすデメリット
なぜ、早る気がダメなのか?
焦っていたとしても、取り組んでいれば結果は出るんじゃないのか???そう考える人もいるはずです。
答えは簡単です。
「冷静ではないから」です。人は何かに追われている時、不安が強い時、頭の中がそのことでいっぱいになっている時、目の前の作業には集中しているようで集中なんかできていません。
とにかく状況を打開することにばかり目が向いてしまい、結果を焦るあまり、大事なことをいくつも見落としがちです。
皆さんも覚えがありませんか?
よーく思い出してください自分の過去を。
なぜ、自分は、あの時あんな行動をしてしまったのだろうか・・・
今なら絶対にそんな判断はしないのに・・・
こんな風に過去の出来事を悔やんだことはありませんか?
それは、過去のあなたが、正しくその「早る気」の状態だった証拠です。結果を焦っていた、それだけだからです。
それは今のあなたが一番よくわかっていますよね?後悔しているんですから
冷静なら、そんな判断するはずがなかったんです。
これが、早る気で行動した人の結末です。後悔しかないんです。
早る気で始めた行動は、実らない努力を永遠にやり続けてしまうばかりか、自分自身で結果を悪化させてしまっていることに気づくこともできません。
子供よりもさらにタチが悪いのは、「大人の早る気」は無自覚であることが多く、子供のように宿題を投げ出そうとしないことです。
というかできないんです。
なぜなら大人には立場や責任があるからです。
私の経験上、特に多いのが、うつ病になって休職したばかりの人。
うつ病と診断されて、仕事を休職し、職場復帰を目的に今日からリハビリなどに通うことになったという人です。
リハビリにもさぞ意気込んでいることでしょう。
ただ注意しましょう。この時期の人は、うつ病と診断さてたことで、今までのダメな自分は能力ではなく、病気のせいなんだと、安心感がある一方で
「さぁ、早く復帰しなきゃ!」と焦る気持ちが強いのが特徴です。
なぜなら、長く休職することでクビになる恐怖、自分がいなくても職場が円滑に回ってしまう役割の喪失感、収入が減ることへの経済的不安、夫として父親としての肩身が狭くなってしまう家庭内の窮屈感など、背後からは必ず不安にさせる要素があなたを追い詰めてきます。
こういった背景から、どうしても、うつ病の克服を急ごうとする人が後を立たないんです。
ですが、先述したように、何の勝算も計画もなく、焦って闇雲に頑張ったところで、努力は報われません。
これはうつ病以外の人にも十分過ぎるほど当てはまります。
まずはしっかりと心身を休め、冷静な判断を取り戻すことから始めましょう。
「早る気」を「やる気」に変える方法
では、早る気をやる気に変えるにはどうすれば良いんでしょうか?
これには大きく4つ方法をピックアップしたいと思います。
今から説明する4つの方法は、とにかく焦る気持ちを抑えて、冷静な判断を下せるということに重きをおいた項目を挙げました。
①諦める
②とにかく寝る(寝溜め禁止)
③気持ちを代弁する
④第三者と一緒に目標を立てる
1つずついきましょう。
方法1「諦める」
これは言葉だけ聞くとかなりネガティブに聞こえるかもしれません。
お前正気か??という言葉が聞こえてきそうですが、もちろん、ここではポジティブな意味で勧めています。
諦める、とは言いますが、よく考えてみて、まずは事実だけを拾い挙げていきましょう。
あなたが部屋に引きこもっていようが、うつ病克服のために頑張っていようが、学校や会社は今この瞬間も何一つ問題なく回り続けています。
これは事実です。
自分をうつに追い込んだ人間たちが、そのうち天罰を受けるだろう。なんていう論理的根拠はありません、いくら願っても恨んでも仕方ありません。彼らは今この瞬間も笑って生活しています。
これは事実です。
クビになるんじゃないか、クビになるんじゃないか、気になりますよね?でもそれは、あなたが決めることではありません。会社が決めることです。
早く復帰しようが、遅く復帰しようが、あなたを評価し、その後どう判断するのかも、あなたの上司の仕事なんです。
これも事実です。
どうですか?これ以外にもたくさんありますが、どれもこれも、あなたが気に病んで仕方がないそれは、本当に「今すぐ」あなたがどうこう解決できる問題なんでしょうか?
そうではないですよね。
早る気に取り憑かれる人の多くは、このように自分にはどうしようもないことで頭の中がいっぱいなんです。
自分ではどうしようもないことに思考と体力だけが奪われ、今本当にやらなければならないことや、目を向けなければならないことに、気付くことができません。
これでは社会復帰が遠のくのは当たり前です。
そうです、いい加減気付きましょう。
物事とは、往々にして、なるようにしかならない、辛辣なことを言うようですが、この現実をまずは受け入れなければならないんです。
だからこそ、私はあえて「諦める」という言葉を、もう少しだけソフトにしてお伝えしようと思います。
それが「しがみつかなくていい」この言葉です。
あなたが身を削り、心を壊し、自殺まで考えなければならなくなるほど、しがみつかなければならないものなんて、この世にはないと言うことです。
あなたにとって、あなたの命や心身よりも大切なものなんてないはずです。
これは私の価値観も半分入っていますので、全員に当てはまらないかもしれませんが。
それでも、あなたが今しがみついているものを一つでも二つでも手放すことができれば、今よりもう少し、心は、身軽になるはずです。
身軽になれば、前に進む一歩も軽くなると、「私は」思います。
方法2「とにかく寝る(寝溜め禁止)」
「とにかく睡眠をちゃんととってください。」という言葉は、主治医の先生などからも散々言われているとは思います。
でも、これだけSNSなどでも睡眠の重要性などが叫ばれる昨今で、眠れるにも関わらず、やはり睡眠を軽視している人が多い印象があります。
睡眠は心と身体の健康そのものです。
脳にとっては老廃物を排出し、記憶を整理し、心を落ち着かせるセロトニンを作り、脳全体の機能を正常に維持するためのメンテナンス時間、つまり「健康維持機能」という重要な役割を果たしてします。
それ以外にも、睡眠不足は糖尿病や心疾患、高血圧、記憶力低下、状況判断能力の低下など様々な弊害を起こします。
精神科のクリニックでも、とにかく睡眠を重要視する理由は、それだけ心身に与える影響が大きいからです。
うつ病では眠れない人も当然多いのは重々承知しています、でも、初めのうちは、チャンスがあればとにかく1秒でも長く眠りましょう。
中にはあなたの睡眠を「怠惰」という言葉で非難する人もいるでしょう。そういう目をむける人もいるかもしれません。
ですが全く気にしなくて大丈夫。
それは非難する周囲の人間がうつ病に対して理解不足なのが悪いのであって、あなたが悪いわけではないからです。
あなたがするべき最重要ミッションは、つまらない周囲の視線に気を遣うことではなく、とにかくぐっすり眠って身体のコンディションと生活リズムを整えることにあるからです。
「」で寝溜め禁止とあえて書きましたが、近年の論文では寝溜めは全く睡眠の効果が得られないと結論づけられています。
15分間のちょっとした仮眠が作業効率を上げるという話は有名ですが、睡眠を小分けにしても「正常な脳機能を維持することはできない」と結論づけられているのです。
睡眠不足の危険すぎるリスクについては下記のブログもぜひ参考にしてください。
方法3「気持ちを何かで代弁する」
人間がうつ状態の時に、潜在的に強く感じていることは、何だと思いますか?
答えは「孤独」です。
今こんなにも辛く、悲惨な状態に陥っているのは自分だけなんじゃないか?
実は自分だけが、こんなヤバい状態になっているんじゃないのか?
そういった孤独感が強い状態なんです。
それが焦燥感に変わると
こんなことをしている場合じゃない、急いで何か手を打たないと!と「早る気」のスタートを切ってしまうわけです。
厳密にいえば、世間には自分よりももっと悲惨な状態の人はたくさんいますよね?
さらにマクロな視点で言えば、世界中にはさらに絶望的な状態で強く生きている人もいます。
下を見れば本当にキリがありません。
ですが人間は、自分が沈んでいるときに、物事をそう言った冷静な視点で解釈することができないんです。自分のことで手一杯ですから、余裕がないんです。
人は、孤独と変化には、必ず恐怖感を覚えるように脳ができています。これには人間なら誰も逆らえない脳の構造です。
でもだからこそ、心理療法の一つに、当事者同士が意見交換をする「ピアカウンセリング」と呼ばれるものがあります。
ピアカウンセリングの目的は、自分と同じ境遇の人の話を聞いたり、いろんな人の価値観に触れることで、「みんな苦しいのは同じなんだ」と思えるようになることにあります。
孤独感を中和して、前向きな気持ちにシフトする効果があるんです
皆さんはこんな体験ありませんか?
街中でふと耳には入ってきた音楽。その歌詞が今の自分にものすごく当てはまっていて、さも自分のために作られたのではないかと、耳を奪われる体験です。
失恋中などが正にそうですよね?
フラれて落ち込んでる時に、失恋歌を聞くと、不思議と、スッと心が軽くなる体験です。
それは歌が自分の気持ちを代弁してくれているからです。
ピアカウンセリングも、失恋歌も、このように自分の気持ちを誰かが、何かが代弁してくれることで、孤独な気持ちを外に吐き出させてくれる効果があるんです。
もちろん手段はたくさんあります。実際の臨床心理士にカウンセリングをしてもらうも良し、誰かに相談するも良し、辛い気持ちを紙に書き殴るもよし、何なら声に出して叫ぶもよし。
とにかく辛い気持ちは身体の外に逃しましょう
そうすると、次第に気持ちが落ち着き始め、脳が冷静な判断を開始し始めます。
この時初めて、「早る気」から、本当の「やる気」に、行動が変化していけるんです。
方法4「第三者と一緒に目標を決める」
方法の4は目標決めです。
ここではあえて「第三者と」という言葉を添えたのには大きな意味があります。
早る気、つまり、うつ状態に近い状態であるほど、冷静ではないからです。
テンションが低く見えるだけで、気持ちは焦っています。
はっきりと言いますが、そういう時に下す決断は大抵失敗に終わります。むしろ状況をさらに悪化させる可能性が高いので、本当に注意が必要です。
これは私個人が何度も経験し、経験談からしても断言できます。
こんな状態では的確な目標は立てられません。
よくあるのが、明らかに今の自分には達成困難な高い目標を設定し、途中で挫折するケースです。
これ本当によくあります。
でも本人はやれると確信しちゃってるんです。だから危険なんです。
なので、あなたのことを客観的に評価してくれる第三者と一緒に、目標や具体的な行動プランを考えることをお勧めします。
目標と聞くと、少し重荷に感じるかもしれませんが、ここでいう目標というのは、本当に些細なことで構いません。
夜は必ず9時にベッドに入る、1日5分ベランダで日光浴をする、まずはこの程度の、できなかった日があっても何の支障もないような、気持ちに逃げ道を作れる目標を立てるのです。
とにかく自分の中に、何か一つ継続できそうな規律を作っていくんです。
この規律の積み重ねが、次第に生活リズムの再構築や、次への取り組みに対する自信に繋がります。
一緒に決める相手は主治医でも良いですし、担当のカウンセラーでも良いでしょう、親や兄弟、友人なんかでもいい、とにかくあなたの意見に偏りすぎない、客観的に見てくれる人物にしましょう。
すでに担当のカウンセラーが決まっている人は、その人が最も良いでしょう。
最後に
いかがでしたでしょうか?
やる気と早る気の違い、ご理解いただけたでしょうか?
復職が長引いてしまう人の原因はたくさんありますが、とりわけ私自身が重要だと判断している内容を解説しました。
もちろん早く復帰したいといえば、我々作業療法士や臨床心理士はその意向を尊重します。
しかし、無理に早く職場に復帰した人に限って高確率でうつを再発してしまったり、状況が変わらず、低いパフォーマンスのまま、また、潰れるまで働き続けたりするんです。
本当はそこで働きたいのに、結局うまくいかず転職を余儀なくされてしまったりと、あまり良い結果にならないことがほとんどです。
せっかく休職し、じっくり身も心も休める時間ができたのなら、焦らずに、一層のこと開き直ってゆっくり、着実に復帰する方が、より再現性が高まり、損をしにくい結果になります。
この記事がうつ病と向き合う、不安でいっぱいな人の参考になれれば嬉しいです。