交渉が上手い人には、ある共通点がある。
それは、相手に未来を見せる力があることだ。
多くの人は、論理や正しさで人を動かそうとする。
しかし実際に人が動く理由はそこではない。
なぜなら人間は他人に指示された通りに行動することに強い抵抗感を抱くからだ。
自分を動かすコントローラーは、常に自分で握っていたい。
誰にも操られたくない。
体よく利用されたくない。
そう思うからだ。ゆえに人は正論で押しても動かないのだ。
だからこそ、いかに相手に自分で決めたこと錯覚させられるかが鍵になる。
人が物事を判断するとき、自分が「どうなるか」で意思決定をする。
つまり、自分の未来がどうなるかで決めるということだ。
このより良い未来を見せる力。
これがこれから解説する最大のキーワードとなる。
- ベネフィットで相手を動かす具体的な方法
- 人が人を動かす本質
未来を思い描かせろ
ベネフィット・・・まずはこの言葉をよく覚えておいてほしい。
ベネフィットは消費者が商品やサービスを使うことで得られる「利益」や「恩恵」のこと。
特にマーケティングでは、機能そのものではなく、使った結果として顧客が感じる良い変化を指している 。
簡単に言うと
• メリット:その商品・サービスの良い特徴。
• ベネフィット:その特徴によって、利用者が得られるうれしい結果。
ということだ。
私はこれを一言で「ベネフィット=未来予想図」と表現している。
私が関わってきた精神病患者に、とにかく「行動できない人」が多くいる。
あと一歩踏み出すことができれば、状況を打開できるところまで来ているにも関わらず、それでも行動に勇気が持てない人がいる。
そんな相手でも、私は自然と彼らに行動するよう促すことができる。
説得も強要もすることなく、自然な形でだ。
その時使うテクニックが、ベネフィットだ。
私は何もしない。ただ第三者として客観的に、彼らが見えていない、または見落としている未来を見せるだけだ。
現状を整理した上で、Aを選んだ場合とBを選んだ場合、それぞれを論理的に説明し、確実性の高い未来を説明する。
それを聞いてどう判断するかは患者次第だ。
それでも、今まで多くの場合で私が「するべき」と思う選択肢を、彼らは選び取っていた。
人は自分の未来をより具体的に思い描くことで、行動への意味づけを行なっている。
わかりやすい例が宝くじだろう。
率直に言って当たるはずがないものを、なぜ人は買ってしまうのだろうか?
その答えこそ、ベネフィットにある。
もし10億円が当たったら・・・
あり得ないと思いつつも、当たった時のお金の使い方をついつい思い描いてはいないだろうか?
だからこそ外れても「次回こそは」と繰り返し買ってしまうのだ。
イメージの解像度はそのまま行動のハードルの低さに繋がる。
相手を動かすのは、理屈じみた正論でもなければ感情論でもない。
純然たる事実から繋がる未来だ。
営業の本質は「不安を価値に変えること」
私の知人に大手保険会社の社長がいる。
彼は現役時代から社内でも非常に優秀で、管理者になった今でも人を動かすのがとにかく上手い。
そんな彼はよく私にこういっていた。
「優秀な営業マンは相手を不安にさせるのが上手い。」
「営業っていう仕事は相手の不安をお金に変える仕事」
そんな彼が常に意識していることがある。
それが「相手を不安にさせること」だ。
- 〇〇しないと責任が問われる
- 今〇〇しておいた方が君が損をしなくて済む
- 〇〇をすると君が欲しがっている結果に繋がらない
相手に対してより将来の具体的なビジョンを描かせ、今とるべき行動の必要性を最大化させている。
わかりやすくいうと、貯金しておかないと欲しいものが買えない。だから今貯金する必要がある。
という感じだ。
それもただビジョンを見せるだけではない。
相手が最も失いたくないと思っている事柄に関連づけて不安にさせるのだ。
彼が教えてくれた一例に、「出世意欲のない若手」という事例がある。
若いうちは出世意欲などなくてもいいかもしれない。
しかし、出世しないと昇進機会が失われ、年齢を重ねるほど転職市場でも不利になるという現実を具体的に教えたそうだ。
AIの普及によって仕事が失われる可能性なども含め、将来出世しなかった場合と、した場合の具体的なビジョンをフローチャート式に言葉で説明したそうだ。
長くかかったが、ようやく彼は自身のビジョンの甘さに気づき、今は次期管理者候補として努力し主任を任されるようになったそうだ。
このように、ほとんどの人は自分の未来について具体的かつ、論理的にプランニングできているわけではない。
大抵の場合は目の前の刺激に反射的かつ感情的に反応している。
だからこそ、優秀な人間は相手がまだ「見えていない」確実な未来を見せてあげることで、相手の行動化を促すことができる。
これがベネフィットの力だ。
なお、行動経済学的に、人間(とりわけ日本人)は他者を押し除けてまで自分が得をすることを望んではいない。
しかし、それ以上に、自分が他人よりも損することを極度に嫌う傾向がある。
相手に見せるベネフィットは、「得をする」ではなく「損をする」ことを具体的に見せる方がより成功率が高い。
「損をすること」がベネフィットの効果を最大限引き出すことができる。
相手の不安を価値に変える。ベネフィットを身につけよう。
相手の恐怖を探せ
人が最も行動力を発揮するタイミングを知っているだろうか?
それは不安や恐怖に駆られた時だ。
8月31日の夏休みや試験勉強、キャリアのかかった重要な仕事、振られないように必死に尽くす恋愛中、借金に出産、健康に命の危機、そして将来・・・。
世の中には人間を不安にさせる要因があまりにも多く、溢れかえっている。
そしてほとんどの人間は何かを失う恐怖や未来への不安を持って生きている。
人はこの恐怖や不安を刺激されたとき、人は最も行動力を発揮する。
もしあなたがしたたかに、密かに他人を誘導したいのなら、この恐怖を利用するといい。
もちろん、これは相手を脅迫しろといっているのではない。
したたかな人間は密かに、相手に気づかれることなく、この恐怖を使いこなす。
相手を動かす成功率を上げる鍵はまさにここにあるからだ。
相手が何を怖れているかを見抜くこと。
例えば経営者なら、
・売上低下
・クレーム増加
・人材流出
こういったリスクに敏感だ。
だからこそ、
「この施策を入れないと将来的に売上が落ちる可能性があります」
こうした一言が強く刺さる。
見るポイントは相手の「立場」「性格」「性別」「年齢」「持っているもの」の5つだ。
立場は経営者なのか、平社員なのかによっても恐れていることが違う。
経営者は上記に挙げたようなことを恐れているが、平社員はリストラや経済的困窮、将来不安などだ。
社会的弱者なのか、社会的強者なのか、経済的に裕福なのか、困窮しているのか。
男女でも分かれるだろうし、20代、30代人間関係や経済的な不安だが、40代、50代、60代は徐々に健康不安が強くなっていく・・・年齢によっても恐れているものが違う。
なので通販系の商品は40代以降の相手にサプリメントの利用者が多い傾向にある。
また、20代、30代では比較的「損すること」よりも「得をすること」に惹かれる傾向がある。
この商品を買うことで肌がキレイになる。これをすると大金が手に入る。
あとは持っているものを見つけるといい。人は所有しているものを失うことに恐怖を感じる。相手が所有しているものの中で、最も価値を置いているものは何かを見つける。それがおそらく喪失する恐怖の対象になる。
このように各ジャンルごとに恐れているものが異なり、それらを相手に照らし合わせて複合的に見つけてみるといい。
あとは相手の生活スタイルや家族構成、経済状況など私生活の情報をなるべく多く聴取してみるといい。
恐怖や不安をその私生活の状況に照らし合わせてビジョンを作り上げる。
それを相手に見せるだけでいい。
決して強引に動かそうとゴリ押ししてはいけない。
相手は自分を操作しようとする人間を敏感に察知して警戒する。
重要なのは、そのビジョンを見せつつ、相手の身を案じての提案をしているという感情をセットで伝えること、そして、最終的に相手が自分で決めたと感じ行動することだ。
決してあなたに説得させられたと思わせてはいけない。
これはあくまでもあなたを思っての提案であるという体を崩してはいけない。
すると自然と相手は自分が見えていない落とし穴に恐怖を感じるようになり、あなたの助言に耳を傾けるようになるだろう。
この方法は使いこなすことができると、ほぼ間違いなく成功しやすい。
すると、あなたは表舞台に立つことなく、状況を思うように動かすことができるだろう。
私たちは日常的に「未来」を買っている
これまで説明してきたベネフィットを使った手法は、何も特殊な技でもなければ高度な心理学でもない。
実は我々の日常にも至る所で目にする光景だ。
良い例がコマーシャルだろう。動画配信サービスの広告やテレビCMなど、プラットホームによって多用される広告の種類は異なるが例えてテレビCMを例に挙げてみよう。
実はテレビCMで最も多く流されている内容は「リクルート」「不動産」「自動車」が代表的だ。
この三つのCMはベネフィットの塊と言っても過言ではない。
特に不動産に関してはマイホーム購入を促すための仕掛けがたくさん仕込まれている。
「1000万円から買えるオーダーメイドの家」
「マイホームを買えば温かい家族の時間が得られる」
「家族に残す資産にできる」
等々。情報弱者を相手に言いたい放題と言ったところだ。
車のCM最近はショートドラマや家族でキャンプしている様子など、車の性能以外にも買うことで得られる未来を見せてきている。ドラマチックに演出することで消費者の感情を動かそうとしている。
しかし見ている人の多くはそんなテレビ側の戦略など意識したことはないだろう。
私個人の意見としては、一個人が何の担保もなしに何千万もの借金を背負うなど正気の沙汰ではないとしか思えない。
健康に生涯働ける保証などどこにもないというのに。
ローンだけを残して働けなくなる、そんな原因不明の予防すらできない難病は数多く存在する。
そんな最悪な状態になっても、購入を促した側は何の責任もとる義理はないのだ。
ここではっきりと伝えておかなければならないことがある。
今、あなたが「自分の意思で買った」と思っているほとんどのものは、実はマーケティングの巧妙な戦略によって「買わされたもの」だということを知っておいてほしい。
他者と比較して見栄を張りたいという欲求も、買うと幸せだと信じているものも、全てはあなたの価値観には本来なかったもののはずだ。
あなたは他人が用意した、他人の価値観でものを消費させられているのだ。
高級な鞄も、高級な車も、それを最初に「良いもの」と言い始めた他人の価値観にすぎない。
その他人の価値観に踊らされて、ものを消費させられているのが、その他多くの日本人だ。
この事実に気づいた人から、マーケティングの罠から抜け出していっている。
私はマーケティングを学ぶにあたって、この恐ろしい事実に直面した時、正直言って恐怖を感じたのを覚えている。
以来、自分の価値観にそぐわないものはたとえ一円でもお金を出さないと決めている。
そうすることで、本当に自分が大切にしたかったものが露骨に見えるようになってくる。
あなたも、今一度よく考えてみるといい。
世の中のベネフィットの罠に、あなた自身がかかってはいけない。
まとめ
したたかな人は、ただ口がうまいわけではない。
未来を設計している。
・どんな未来を見せるか
・どんな未来を恐れさせるか
これをコントロールすることで、
相手の意思決定を動かしている。
交渉力を上げたいなら、
今ではなく未来を語れ。
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