ど、どうしよう・・・!何か友達から重い相談を受けちゃいました。でも何て答えてあげたらいいのか・・・内容が重過ぎて手に負えなくて困ってます。
あ〜そういうのありますよね。気軽に相談に乗ったら、思った以上に重い内容だったこと。
そうなんですよ!まさしくそれです。でも友達はかなり深刻に悩んでて・・・他に相談できる人もいなくて、やむなく僕に相談したらしいんです。だから無下に断るわけにもいかなくて・・・。
そうですか。それなら最低限、相談に乗るときのやってはいけない注意点や、すぐに使えるカウンセリングのスキルを身につけておきましょう。そうすれば、相談に乗るあなた自身の負担も少なくて済みますよ。
友人や家族、職場の同僚などから悩み相談を受けることってありますよね?
相談の内容は多くの場合、対人関係に関するもの。
なんとか力になってあげたいと思う反面、下手なことを言って事態を悪化させてしまっても責任が取れない。
そんな風に、他人の悩みを聞くというのはなかなか神経を使うものですよね?
そんな方に、今回は私も実際の患者に使用し、実際の精神科でも行われているカウンセリングのスキルについて、一部ご紹介していきます。
カウンセリングの大原則、アドバイスをしてはいけない!
え?アドバイスしちゃダメなの・・・??
意外に思われるかもしれませんが、実際のカウンセリングの場で、セラピストは相談者に対して積極的にアドバイスを行いません。
理由は2つ。
- カウンセラー自身も相談者全ての責任を負えるわけではない
- 相談者自身に答えを見つけさせるため
理由の中で重要なのは2つ目になります。
なぜなら、カウンセリングの目的は相談者自身に答えを見つけてもらうことが目的だからです。
あなたが安易なアドバイスをすれば、一時的に問題が解決するかもしれません。
ですが、次も、次もと相談されるごとに、あなたが答えを提示してあげたらどうなるでしょう。
相談者はあなた無しでは問題に向き合うことができない、不健全な依存状態になる可能性があるのです。
それはカウンセリングの本質から外れた行為です。求められることに優越感を覚える方もいますが、だからと言って安易なアドバイスは行わないようにしましょう。
安易なアドバイスを繰り返すと、相手の不健全な依存状態だけではなく、あなた自身も、精神的に自分を追い込むことになっていくからです。
会話は聞き手3割、話し手7割の量を意識しましょう
相談に乗るとついついアドバイスしたくなりますよね。
自分のアドバイスで相手が喜んでくれると尚更「もっと力になってあげたい」と思うもの。
でもそこはグッと堪えて、まずは相手の話に耳を傾けましょう。相談に乗るときの基本的な会話の量ですが、原則相談者が7割、聞き手であるあなたが3割の比率で発言しましょう。
なぜなら、相談されているのにも関わらず、あなたが一方的に話していたのでは意味がないからです。
あなたが一方的に話してしまうと、相手は会話のタイミングを逃してしまい、自分が本当に伝えられなかったことが伝えられなくなってしまうからです。
ただでさえ、相手は自分の頭の中で悩みを整理できていない状態なのです。
もしかすれば、後々になって大切なことを思い出し、話題に浮上するかもしれません。
その時、いつでも話題を切り替えられる状態になければ、相手はそのタイミングを逃し、不完全燃焼で終わってしまうからです。
つまり、メインである相談者から、発言のタイミングを奪わないこと。
常にタイミングの主導権を相談者に渡してあげましょう。
聞き手は傾聴と共感の態度に徹すること!
実際に相談に乗っている最中、どのような態度で接すれば良いのでしょうか。
それは傾聴と共感に徹することです。
相手の話に耳を傾け、相手の感情に共感する姿勢です。対話で重要なのは「理解」ではなく「共感」だと言っても過言ではありません。
相手の話が全て理解できなくても、適切な相槌を打つことができれば、「私はあなたの話をしっかり聞いていますよ」というメッセージを送れます。
- 「なるほど、そう考えたんですね」
- 「それで、どうしたんですか?」
- 「それは酷い・・・」
- 「そうですか、そんなことが・・・」
- 「それは大変でしたね」
このように相手の感情に共感する反応をしましょう。
言葉は言葉通りの意味だとは限りません。その言葉の裏にある感情を汲んでほしいと思っているものなのです。
例えば、これはクレーム対応などでよく例に挙げられます。
「ここの肉は歯に挟まりやすくて食べにくい!!」
という、たまに無茶苦茶なクレームをつけてくる客というのは稀にいるものです。
しかし、客の多くはその問題が自分1人のクレームでは事態が思い通りにならないことはわかっているものです。
上記の例で言えば全国の生肉業者に、歯に挟まりにくい肉を用意させろ!何て本気で言っている訳ではないのです。
つまり、その裏にある「歯に肉が挟まりやすくて、美味しく食べることができなかった」という気持ちを汲んでほしいと思っているのです。
ここで店側が淡白で論理的な反撃をすれば、相手はより不機嫌になるだけなのです。
このように、相手の言葉に隠された感情を見つけるよう意識してみましょう。
最もイメージしやすいのは、自分に置き換えて想像してみることです。
返答に困ったら「オウム返し」で会話を繋げよう!
カウンセリングのスキルで比較的知名度が高いのが、このオウム返しではないでしょうか。
オウム返しは、その名の通り、相手の言葉をそのまま返す手法です。
- 相談者「最近なんだか仕事が億劫で・・・」
- 聞き手「仕事が億劫なんですか・・・」
と言ったように、自分の意見や考えを表明しなくても、相手の話を自然に促すことができるため、比較的初心者でもすぐに実践できるスキルです。
ですが、このオウム返し、多用するのは厳禁です。
相手が言葉を発するたびに、相手の言葉をオウム返ししていたのでは、「私は鳥か鏡と会話しているのか」とでも思われてしまいます。
確実に相手の気分を害してしまうので、これは会話の切り出しや、会話に行き詰まった時に使用するようにしましょう。
オウム返しには相手の背中をそっと押す効果があります。特に相手が何か話しづらそうにしている時などは効果的です。
相談者「実は家族が・・・」
聞き手「ご家族が・・・」
と言ったように、「大丈夫、話を続けてください」というメッセージになるのです。
難しい質問には無理に答えなくていい
会話が深くなってくると、話題はより答えにくい核心に近くなります。
「これから私は、どうしたら良いんでしょうか?」
と聞かれたらどうでしょう?かなり答えにくい状況ですよね。
こういった質問には、相手の漠然とした不安が込められているものです。
この行き詰まった苦しい気持ちをわかってほしい、という気持ちです。
相談者は少なくとも、あなたよりも冷静ではありません。
そんなところへ下手なアドバイスをしても、状況は悪化するだけです。
そんな時は「難しい問題ですよね・・・」「一緒に考えましょう」と孤独にさせない返しをします。
あるいは「それは具体的に・・・?」と言ったように逆に質問をして相手にもう一度自分と向き合うきっかけを作ります。
すると相手はもう一度整理しようと考え、話し出してくれます。
こうして相手に自分と向き合い、何度でも考える機会を与え続けることが大切です。
すると不透明な不安が、徐々に透明性のある不安に変わり、本人自らが解決策を見出すことにつながるからです。
カウンセリングの本質はこの状態に相談者を持っていくことと言っても過言ではないでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、他者から相談を受けたときの対応方法について、最低限注意しなければならないこと、や困った時の上手な返し方など、カウンセリングの初歩を一部紹介しました。
友人や家族など、親しい間柄であれば、お互いに相談し合うことも珍しくはありませんよね。
そんな時、せっかく力になってあげたいと思いつつ、実はあなたが相手の事態をより悪化させてしまうこともありうるのです。
その結果、「あなたに相談したのが間違いだった」と相手に思われてしまうと、関係は破綻に向かいだけなのです。
今回の投稿が、そんな対人関係で悩む人にとって、わずかながらヒントになれば嬉しく思います。